考えさせてくれた小説


考えさせてくれた小説

面白い本を読んだ。出会ったのは図書館。分厚い本で、普段なら恐らく見向きもしない本だと思うのだが、何故か手に取り借りた本。


ところがこれが面白かった。なかなかハードボイルドでもあったし


舞台はちょうど江戸から明治になるころ、主人公はいわいる若い浮浪者なのだが、その育ての親とも言える爺とのやりとりがすごい


     這い上がりたい(出世したい)は浅ましい。十郎(主人公のマブダチ)のような奴は掃いて捨てるほど世の中にはいる。確かに十郎は痴れ者ではない。多少は出来る。すなわちそれなりですれなりはそれなりでしかない。だが、十郎にはまわりのものが間抜けに見えて仕方がない。しかしだからといって上に立つ物の甲斐性がない。それよりも十郎には天真爛漫もなければ、真に抜きんでた才もない。


     天真爛漫?とは


     その口にする言葉、その行い、すべてに偽り無く飾らぬ事。


     ありのままということか?


     そうだ。では一番強いのはなんだと思う。


     やはりありのままか


     そう、無邪気。邪気が無いことが一番よ。


     邪気とは?


     先々を思い、煩う弱さが邪気の最たる物だ。自分の昔をあわれみて、先々の自分の食い扶持ばかりに気をかける。ところが今がない。今、息をしている自分のこともきれいに忘れて蔑ろにしている。


 


なーんてことが書いてあります。


その他にも沢山おもりことが書いてあるのですが、むかしの酒、清酒ですが上方ものが一番上手いとされていた。それは、和歌山の杉の樽を船に載せ、揺られ揺られて富士山を見ながら江戸に入ってきた酒だからうまい!とのこと。灘の清酒に船で揺られている間に杉の香りが移り、極上物になるんだとか。


そのおかげでそれ以来悔しがった上方の連中は、灘の酒を一旦船に載せて潮岬まで船で行ってまた淀に戻り、樽の香りが移った酒を飲んだとか


あと焼き芋ですが、「栗よりうまい一三里」とあるそうですが、これは九里四里うまいので一三里とのことです。


私の庭
この間から読んでいる花村萬月さん


お勧めでした。



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