ここのところ、ジョークネタばかりでしたので、たまにはお仕事しなくては…というわけでネタを探し、今回は係留、ムアリングについて
係留すると言っても、潮の干満に応じて浮き沈みする桟橋に舫うのと、岸壁に舫うのとでは全く異なるのはご存知だろう。桟橋は潮の干満に応じて船と一緒に浮き沈みするが、岸壁は船だけが浮き沈みする違いだ。
それぞれのテーマを書くとかなりになるので、今回はまず桟橋に繋ぐことにテーマを絞って紹介。
マイアミあたりのマリーナの桟橋を散策するたびにそのムアリングされた船たちを観察すると、実に様々な個性で係船されている。ある、ベテランの船長に言われたのが、「舫いを見てご覧。そのやり方で船長のスキルがわかるし、性格だってわかるもんだ。」
そんなことでわかるのかと若かった当時は思ったが、なるほどと思うようになった事柄を今回紹介します。ただ、だからと言って、カジキ釣りと同じようにこれが正解というものはないとも思う。それぞれの地域の海、潮の干満差などによって、そしてなにより責任者である船長がどう考えているかで一番洗練されたものがちがうからだ。
さて、桟橋を歩きながら清掃の行き届いた輝く綺麗な船にはその止め方に共通項があることに気がついた。そのことについて、知り合いの船長何人かに尋ねると同じ答えが帰ってくる。
そんなに干満差がない常識的なところは潮の流れも激しくないので、Spring lineのロープをできれば長くビチビチに張るべきだ。これはエンジンのパワーを使って締めるくらいピチピチに。ロープは伸びるからね。何故って? 緩いと風で船が押されて走り出し行ったり来たりしてしまったら、船、桟橋ともにクリートが船の大きな自重のパワーに持たないからだよ。
この写真の違いがわかるだろうか?黒いハルも方はピチピチに張っているが、白いハルの方はかなり緩い。この船、本数は多いが全く考えていないわけでもないようだ。ただ、クロスしているところ、ここが擦れること考えているかが問題。今写真が手元にないが無造作にパズルのようにもやっている船がある。逃げなくてはならないと判断するときに、いざ出ようとしても混乱するばかりだ。つまり綱一本一本の意味がわからないのだ。
論外なのはこの例、
綱がゆるすぎて海面に浸かり海藻が付着、これではいくら強い太さの綱でも劣化して弱くなってしまい、何かの力で簡単にきれてしまうことが考えられる。
次に、船側で調整できるように桟橋側にアイを置くのか、
これは、実はどちらでもいいのだが、全部をどちらかに統一するべきだ。ちぐはぐだと混乱して素早く処理できないからだ。
例えば、船に人がいる、もしくは船のウインドラスを利用して詰めたい時には全てのロープは桟橋側をアイ留する。逆に、例えば船に乗船しずらいマリーナの人でも詰められること考えたり、定置きで決まり切った長さを固定する時には船側をアイにすると、出港帰港時の作業が素早く処理できる利点がある。
わざと、緩く張る場合もある。潮の流れが強く船が反応してしまう場合だ。緩くして漂わせ、ロープの反動が無いようにすることで船を安定させる。
だから、一概にこうでないといけないとは言えないのだが、ただ綱をモヤえばいいというものではない。舫ロープ一本一本にそれぞれ意味があることを考えて、舫いたいものだ。それがわかる舫の取り方をしている船は、その船長の技量がわかるとも言えるのではなかろうか。無駄なくスマートに。いざというときにはすぐにもやいを解けるように
沖縄などでは細い浮きロープで蜘蛛の巣のように張るという。これは、台風の通り道となる沖縄の知恵。細いロープであれば、一人の力で簡単に詰められるしその際に海面に浮いているので長くとっていてもそのラインの行方が見える。そのかわり一本では切れてしまうので蜘蛛の巣のようにがんじがらめにするようだ。
舫ロープに擦れ止めが施されているか、エンド処理が適切かなども、注意が必要なのは言うまでもない事柄だ。
また、クリートは長て方向に強いが真横は弱い。よく、クリートから真横に、いわいる大型艇に使うBreast line、船に直角に長時間もやいをとっている船があるがあれも考えが足りない。船の大事なクリートを長時間使うことで余計な負担をかけさせているからだ。
さー、これで船のもやいをみれば船長の技量がわかるというお話は、ご理解いただけました?