出港


出港

出港準備を書いてしまったので、その流れで進めましょう。ただ、これらはこのwebにも掲載しています月刊パーフェクトボート誌にて連載した「スマートキャプテン、6:4の法則」にも重複していますので、予めご了承の程。

さて、出港。出港準備でクルー全員と段取りの打ち合わせをした通り行います。
基本は、風下のもやいロープから順序切って行き、風上のもやいを切る時には船と桟橋や岸壁に隙間が自然に作れていることが望ましいのです。もしできていない時は、


40フィートくらいの船であればクルーが押してくれれば船が離れて充分な隙間が作れますが、場合によってはクルーの一人が手にフェンダーを持ってもらい、そこを支点にしてそのば回頭などのテクニックを使ってとにかく充分な隙間を作ります。これ大事!何故って、例えフェンダーが入っていても船を長い時間こすることに変わりがないからです。もちろん、スラスターが付いていれば利用いたしますがあまりスラスターに頼らないように。何故って、スラスターはモーターを使っているものが多く、電流を多く使います。ものによってはある程度電流を流すと自動的に止めてしまう機構もあり、ここぞという時に使えなくなる場合もあるからです。特に古い船にはご注意を。さらに、港の中には浮遊物が多くスラスターに絡めたらアウト!なんです。
さらに、ちょっと離れた所で外側に舵をきって出そうとしますが、その時気をつけて。充分な隙間が無いと船のお尻をその行き足と外輪差?(なんていうんだ?)で岸壁や桟橋に擦ってしまいます。

港の中は徐行、これは他船への配慮もありますが、クルーたちの作業が安全に迅速に出来る配慮でもあります。だから、港を出てしまっても、速度をあげなければ船が安定しないなど安全上問題がなければクルーから作業終了の報告があるまでは徐行しています。其の間キャプテンの僕は、ゲストの居場所、サービスが行き届いているかを確認。GPS上で目標の設定、針路方位、距離と到着時間を割り出し、港が目標値であれば連絡してETA(estimate time of arraival)概算到着時間など知らせます。到着時間の割り出しは必ず行ってください。何故って、ガスったりしても、何分走っているから今はどの辺りと常に頭で想像できるからです。針路方位は、GPS上ばかりでなく、他の計器との誤差も確認し、どの計器でも目的地に走っていけるように確認します。さらに、航行経路に危険地帯など注意すべき地点はどこかを掌握します。暗岩などはもちろんですが、見落としがちなのは河川。特に雨が降った時などは流木が河川から流れ出ているからです。もちろん、海底地形図も頭に描けるようになると海流なども読めるようになり浮遊物が固まって流れているところが想像できます。この辺が、エッヘン、プロたる所以かな。

増速、その前にキャビン内などの整理もできているか、お客様に増速する旨の確認ができているかをクルーに聞きます。お客様は全くわからない人、さほど急ではないのに増速をして尻餅着いて骨折したという事故を聞きますので増速前には周知徹底。
ガソリン艇もディーゼル艇も、増速をし出してプロペラが海水を蹴り船が押され、プレーニング(滑走)に入る前というのは一番負荷が高いところです。船の船型や搭載エンジンによってまちまちですが、ディーゼルではだいたい1100回転から1500回転が、船がまだスピードに乗らずに立った状態となり一番負荷が高いと思います。引き波で行うサーフィンなどはこの引き波が一番高くなる時を使います。スーッとバウ先が落ちてきますが、そこで始めてスピードに乗った、ハンプを乗り越えた状態。そこまでは、エンジンに無駄に負荷をかけないようにスロットルをスムースにあげて行きます。稀にハンプした状態のまんま走らせている船を見ます(引き波サーフィンしてもおなじですが)が、黒煙が上がり出したり、かなりの負担を強いている状態だということをお忘れずに!そのままではエンジンが悲鳴を上げ壊してしまいます。ターボが付いている船などは、ターボホイッスルというターボ音を聞いてもわかります。
さらにこの時の振動にご注意、問題がある時には大体ここで不自然な振動が出ます。プロペラがロープを拾っていたり、停泊中にプロペラが底を着いて変形したり、エンジンの何かがおかしかったり。
巡行スピードは、その船のmax回転の八割以下にすること。ズーッとmaxで走らせるということは、これもまたエンジンに負荷を強いていることです。さて、2350回転が定格maxだからと言ってその八がけ1880回転で良いとは思わないでください。船には貝が付着していたり、プロペラがキャピテーションを起こしたりと定格通りにはなかなか出ないからです。そう言う意味では安全を見て七掛け1645回転、ここだとハンプした状態のまんまかもしれない時が有りますのでそこまでのバンド帯のエンジン音を聞きながら一番滑らかだなーと思えるところがその日のその船の巡行スピードです。燃費もかなりの差が出ますので留意!
スロットルの回転数も、エンジン音をよく聞いているとワンワンワンと聞こえハウリングしたりします。これは左右両舷のエンジン回転数があっていない証拠。計器で確かめ音聞いて両舷のエンジンが同調しているかに気を使ってください。留意していないとどちらかのエンジンを無理強いしていることになります。たまに安定して走らせているのに、ワンワンワンとハウリングを起こすことがありますが、潮流などによって両舷のプロペラの負荷が変わってしまうことがありますので、様子を見ながらあまりにハウリングしているのであれば同調させてあげます。今のエンジンコントローラーにはシンクロという便利なスイッチがありますが、あれは機械的に両舷の負荷を同調させてくれる優れものです。でも、エンジンの音、振動は航行中常に気を配り、異変に敏感に対処できるように訓練してくださいね。

さて、よく中古艇の査定やエンジンサーベイを行うと、エンジンに癖がつくというのを耳にします。これは、最も使うレンジのピストン内壁の削られ具合を示すことが多いようですが、たしかに操船してみると噴き上がりが悪かったりと個性が出てしまいます。それをなくして健全状態を保つのには、エンジン屋さんに聞くと第一にできるだけ頻繁に負荷運転をすること。これについては、定期点検の項で説明いたしますね。もう一つは、その日の航行時間の五パーセントの時間、maxで走らせると良いと聞きます。つまり、港に帰る最後のレグで、その日の航行の五パーセント、1時間航行したら30秒をmax運転して、ピストン内壁をフルに使うと良いとのことです。

書いてしまうとこんなにたくさんの事柄があります。いや、もっとあるなー。
それらを瞬時に、もしくは短時間に処理していくには、やはり、経験と慣れが必要になります。あるひ、女性クルーの一人に教育の一貫でやらせたことがありましたが、スロットルをあげながら音を聞き、振動を感じ、針路をステアリングを切って併せ、周りの船の航行、浮遊物の確認、これだけでパニックになっていました。

 

 

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