ムアリングのスタイル1 ロープ

ここのところ、ジョークネタばかりでしたので、たまにはお仕事しなくては…というわけでネタを探し、今回は係留、ムアリングについて

係留すると言っても、潮の干満に応じて浮き沈みする桟橋に舫うのと、岸壁に舫うのとでは全く異なるのはご存知だろう。桟橋は潮の干満に応じて船と一緒に浮き沈みするが、岸壁は船だけが浮き沈みする違いだ。
それぞれのテーマを書くとかなりになるので、今回はまず桟橋に繋ぐことにテーマを絞って紹介。

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クルー養成講座 第1回 シーマンシップ

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クルーのRです。

ビジネスでその人がどんな人か判断するには、その部下を見ろとよく言われてますが、船も同じです。キャプテンの力量はクルーの動きを見れば分かります。他にも舫いの取り方や船の佇まいなど判断基準は色々ありますが、クルーについて書いてみます。

新人クルーの教育をする際に、自分が楽できるように書きますが、何かみなさんの参考になる部分があればうれしいです(^O^) 続きを読む

スマートキャプテン 第4回  ロープワーク

SMART DRIVING 船長の心得とへルムワーク

4:6の法則

操船の基礎はすでにいろいろな場所で紹介されている。

もちろん、海技免状を取る際にも教わるが、それは基礎となる一軸船での、しかも通り一遍なもの。免許を取ったからと言ってとも、飛行機のライセンスのように完璧を保証されたものではなく、経験の第一歩を踏むもの。とても実際に高価な船を無傷で離着岸できる経験を積んだものではない。2軸船、特に30フィートを超える大きさになると、操船技術だけではなく、綱を取ってくれるクルーとの連携も大切になる。ここではクルーの動きまで含めた操船術を検証し、ワンステップ上の操船をマスターしたい。

第四回:ロープワーク

桟橋に何気なく係留しある船のもやいの取り方やフェンダーの下げ方でロープワークをみると、乗らずともその程度がわかる、とは失礼な言い方だろうか。

 が、やはりゲストとして招かれたその船の情報として、クルーワーク、ひいては船長の技量となると大げさだが、それらを如実に表しているこれらの事柄に、どうしても目が行ってしまう。私はそのもやいの取り方やフェンダーワークを目の当たりにして、ヒエー「怖いなー、乗りたくないなー」と実感することがあるほどだ。

 ロープワークは、品格ある額縁入りで壁に飾ってあるノットボードなどをみるといろんなロープワークがあり、とても楽しい。あれらは、ただの一本のロープを、それぞれの目的に応じて工夫され、さらに長い時間をかけて洗練された先人たちの教えである。いずれも最低限の動作で、十分な強度を保ち、なおかつまた一本のロープに戻しやすいように、試行錯誤を繰り返し完成されたもの。

 ロープワークは、船だけでなくアウトドア関連でも専門書がたくさんある通り、船を離れた実生活でも役立つことが多い。それらの専門的なことは様々な本を読んでいただくこととして、だが、それらの本を読んでみると、こんなに沢山のノットを覚えなくてはならないのかと恐怖におののく方も多いと思う。

 ところが、セールをロープで操る帆船は別として、近代ヨットでさえ実ははあれほど多くのノットやロープワークは必要としない。ましてやボート、ロープを束ねるコイルの仕方を含めて、せいぜい4つのやり方だけを徹底して覚えておけば十分だ。今回はそのロープワークについて、4:6の法則を交えて紹介しよう。

ロープワークはクルーの間で統一する。

 まず、ロープについてだが、今いろいろなロープが市場に出回っている。それぞれの材質や編み方によりその特性があり用途が限定されているものもあるので、その選択にはやはりお店の方なり、経験者の話を参考にされたい。たまに、小さい船で、工事用に使う黄色と黒のトラロープを使っているのをみかけるが、安価なのはわかるがきっぱりとあれは止めてほしい。船にありがちな伸びに対する切断強度が足りないのだ。また、古くなって硬いロープをそのまま使っていたり、船の大きさに適さないロープ径のものを使っているのも、これはロープワーク以前の問題だ。

 横浜のマリーナでは、夏に「もやい祭り」という、安全を守ってくれたもやいに感謝し、古いロープをみんなで供養、その際に新しいロープに変えましょうという催しを毎年やっているが、まー供養とまで行かなくとも、古くなったロープは交換すべきだ。

 車のタイヤもそうであるように、船の係船に使うもやいロープは、実は伸び縮みをしてばねの役目も果たしているので、摩耗したり経年劣化して硬くなったロープは、強度が極端になくなる。残念ながら車のタイヤのようにすり減った目安となるトレッドマークのようなものが無いので、まーいいーかと見過ごしがちだが、たとえ見た目にはきれいでも海上係留をしている船はやはり2年に一回は新品に交換したい。

 さて、船が着岸する前にクルーは最低2個以上のフェンダーを船側に下げることとなるかと思うが、例えば複数のクルーがそれぞれのやり方でフェンダーを結びつけたとしよう。その際、こんなことが起こりえる。さて岸に船が近づいてきた。ハッと見るとフェンダーの高さが合っていない。急いで複数あるフェンダーを調整しなくてはならないが、それぞれが違う結わえ方をしている。自分でした慣れたやり方であれば簡単に調整できるが、他人のやった見慣れない結わえ方に「どうなっているんだろう」と、まるでパズルを解くがごとく観察しての調整を強いられる。迫ってくる岸壁、船長からいつまでやっているだと怒号が響き渡る。やっとの思いで調整を済ませ、岸壁に飛び移り、投げられたロープを受け取ろうとすると、放り投げられたロープはくしゃくしゃに絡まってこちらに届かず海にあえなくドボン。もたもた、あたふた、素晴らしい船であればある程、着岸を見守る人々は笑いを堪えている。挙句の果て、ロープを受け取るとそのエンドは何かわけのわからない結びでアイ(輪っか)が作られている。あわてているので、とにかくそのアイをボラードに掛けると船の自重とともに風にピンと引っ張られたロープがその結び目からぶちっと切れた。こんな悲惨な光景を見たことがないだろうか。

 まーちょっと大げさではあるが、ちゃんとロープワークをやっておかないと、このような笑いごとでは済ますことのできない悲惨な事が起こりえるだろう。 そのためにも、数の少ないそれぞれの目的に応じた、また応用ができるロープワークをクルーを交えてみんなで練習しあうことが必要だ。ヨット乗りの経験をもつクルーがいれば、おそらくヨットで教育された理にかなったロープワークを知っているだろうし、そでなければこれから紹介する最低のロープワークはみんなで練習しておいてほしい。

 大別すると、まずはもやいに代表されるアイ(輪っか)を作るもやい結び、フェンダーなどをぶら下げ、その調整に便利なまき結び。船には必ずあるクリートに結びつけるやり方。ロープを揺れる船の上で保管してもこんがらなく、実際に使うときにはすぐ使え、また放り投げてもちゃんと一本のロープとして飛んでいくコイルの仕方。この4つだけ覚えておけば問題がないのだ。

 さて、今回はロープワークという、クルーにとっては必ず必要なことを書いてきたが、これらを指導するのはもちろん船長である。そして、船から引き揚げるときには、それぞれちゃんとロープワークができているか、舫いは安全かを確認するのも船長の仕事だ。そういう意味で、係留されている船のもやいをみると、おのずと船長の技量が見てとれてしまうのであることを、4:6の法則の一つとしてお考えいただきたい。

クリート結び

基本中の基本。よくぐるぐる巻きにしたり、基礎を抑えていない結びをみるが、これだけは本当に恥ずかしいことだと思ってほしい。シンプルにクリートにもやわれているのは、出ようとするロープの力を利用してクリートに押さえつけてくれ、どんなに強烈な力で引っ張られていても簡単に解くことができる洗練された形だ。

もやい結び Bowline Knot

アイ(輪っか)を作る為に船には絶対に必要な結びだ。アイ自体のみが解けたり、どんなに強い力で引っ張られても切断することもなく、またアイが縮まらないように、さらに解くときには簡単にできる結び。応用として落水時などにも、自分の体にまわしてもやい結びをしてホールドすることもできる。たとえ目に見えない水中にロープがあっても、自在にもやい結びができるように訓練するべきだ。レース艇のヨットのクルーとして乗り込むときに、目をつぶってもやい結びができないと乗船を許可されないということもあったくらいだ。

巻き結び Clove Hitch

引っ張れれば引っ張られるだけ強くまきつくように考えられた、シンプルで効果的な結び。 調整も簡単、解くのも簡単。ただ、フェンダーなどを長期にわたって固定するには、もう一工夫が必要にはなる。というのは、引っ張るテンションが一定でない場合、解けてしまうくせがある。そんな時には2重でまいたりの工夫が必要になる。応用としては、ボラードなどに使え、わっかを2つ作って先端側のわっかを上にするように交差させれば簡単にできる。また縦棒に対してはその取り付け位置が引っ張られる強さによってずれにくくする工夫もできる。

ロープコイル

いつでもさっと使えるようにしておくのがこのコイルだ。揺れる船のロープロッカーの中でもお互いが絡まないように用にも考えられている。そして投げてもちゃんと一本のロープに戻るようになっている。コツは、単にループするのではなく、ロープのよじれを生じないようにロープをねじりながらコイルすること。よじれが原因でループが8の字になってしまい。コイルが干渉しあってからんでしまうのを防ぐことができる。

スマートキャプテン 第3回  アンカーリングの法則

SMART DRIVING 船長の心得とへルムワーク

4:6の法則

操船の基礎はすでにいろいろな場所で紹介されている。

もちろん、海技免状を取る際にも教わるが、それは基礎となる一軸船での、しかも通り一遍なもの。免許を取ったからと言ってとも、飛行機のライセンスのように完璧を保証されたものではなく、経験の第一歩を踏むもの。とても実際に高価な船を無傷で離着岸できる経験を積んだものではない。2軸船、特に30フィートを超える大きさになると、操船技術だけではなく、綱を取ってくれるクルーとの連携も大切になる。ここではクルーの動きまで含めた操船術を検証し、ワンステップ上の操船をマスターしたい。

第三回:アンカーリングの法則

夏、静かな入り江にアンカーリングをして、海を泳いだり、船から飛び込んで遊びたくもなる。冬でもやはり静かな入り江にアンカーリングをしてゆったりランチを楽しむというのもボート遊びの優雅なひと時だ。花火大会でもアンカーリングをして、うっとうしい排気音や排気臭にじゃまされることなく、ゆったりと真夏の夜空の祭典を堪能したい。

 それと、これはあまり話題にはしたくないことだが、万が一洋上を航行中エンジンが止まってしまったら。航行不能、となれば海底に届かなくても投錨することをお勧めする。風や潮で流されても、いくらか風上に船首を向けてくれる働きをし、船の安定に貢献するだろうし、暗礁などの乗り上げ事故を未然に防ぐには船がかかる前に錨がひっかかってくれ、大きな事故を未然に防ぐ良策となる。船首に普段ぶらさがっているアンカーを活用するということはとても大事なことだ。

 さて、我々がアンカーで楽しんでいると、後続の船が右往左往、アンカーが決まらず、しまいにはどこかに行ってしまうという光景を見かける。このような状況はその船長にとっても、何度も錨を海中に投げ込んでは重い錨を巻き上げているクルーにとっても、もう勘弁してくれという状況で、同船しているゲストにとっても不安が募り船全体がフラストレーションの塊となり、はたから見ている我々もこっちに影響がないかついつい見入ってしまう。そこにいらいらとした怒り声など聞こうものなら、入り江全体が暗い雰囲気に包まれる。

 とはいっても、このアンカーリングが、ポンと海に錨を投げ込めばいいというものではなく、案外難しいものなのだ。ではどのようにすれば最小限で決められるのかを検証してみよう。いまさらといわれるかもしれないが、アンカーリングの手順を説明する前に知っていなければならないことをまとめてみよう。まず、アンカーと一言でいってもいろんな種類のアンカーがある。砂地に効かせることを考えたもの、岩場などで使うもの、そして、海底まで数百メートルというところで使うパラシュートアンカー。主に砂地で効きやすいように考えられている、ダンフォースやブルースアンカーは、よくプレジャーボートに装備されているのでご存じの方も多いだろう。大きさもその船に適応したものを使うのは言うまでもないことだが、これは日本では船検のJCIルールによって装備されているはずなので、まずは心配がないと思うが、念のため、自船にはどのようなアンカーが装備されているのか、また砂地に適したものなのか確認する必要がある。さらにそのアンカーについている錨索は、ロープだけなのか、チェーンがついているのか、これによっても効きが違ってくる。錨索についていえば、一番効きが良いのはオールチェーンのもの。チェーン自体がその重みと形状からアンカーの役目を果たしてくれるからだが、案外扱いが面倒で、さらにバウのアンカーロッカーにはかなりの重みができることになり、またいざという時に簡単に切って逃げることができなくなる。錨から5mくらいだけチェーンにして、あとはロープというのも有効。海底におりたアンカーをチェーンが効きやすいように補佐し、また、アンカーが暴れてしまわないように押さえつけてくれる役目を果たしてくれる。ただ、巻き上げる際にロープの巻きとチェーンの巻きに気を使わざるを得ない。すべてがロープの場合が一番効きにくい。アンカーをしっかり海底にバイトさせるような動きを船でしてあげないと、ただ海底に落としただけではアンカーの自重だけに頼ることになり、なかなか難しいかもしれない。いぜれの錨索にせよ、事前準備として大事なことがあるのだが、それは時間のあるときにでもすべての錨索を出して、5m刻みで良いからマーキングをしておくこと。実際にアンカーリングの時に最低水深の3倍の錨索が必要といわれているが、実際に打っているときに錨索がどれくらい出たかを掌握できないからだ。 また、面倒ではあるがお勧めなのはアンカーがどの位置にあるのかがわかるようにパイロットとなるブイをアンカーの頭に準備すると良い。とくにオールチェーンの錨索をお使いの方にはお勧めする。どこにアンカーが位置するのかブリッジから一瞥できるし、万が一、岩にバイトしていまい上がらない際、頭に付けたガイドロープを引っ張ることによって爪が抜けることもあるからだ。我々の72フィートには、必ずこのパイロットブイをつけるようにしている。

 さらに、ウインドラスはどのようなものが付いているかも確認しておこう。アンカーはレッコという言葉に表れるように、海底に放り込むという考え方だが、実はその際、爪が翼のようになって海中を斜め横に走っていき着底する。その状態で最後に引いてやれば爪がしっかり海底にバイトするように作られているのだが、ウインドラスによっては下すときにジーコジーコとモーターのスピードでゆっくりとしか下せないものものある。それにより操船も変わってくるのだ。

 それらを踏まえたうえで、6:4の法則に移ろう。まずは、その静かな入り江に侵入するところから。ヘルムスマンは事前の引き波が、先に投錨している船の迷惑にならないように自船の引き波に注意をしてデッドスローで侵入すること。例え他船がいない場合でも、自船の引き波の影響を受けないにケアすることが必要。そして魚探があるのであればあらかじめスイッチを入れておこう。魚探から様々な情報を得られることができる、まずは海底の底質、岩場なのか、砂地なのか。砂地でも海藻が多いかどうか。そして深さ、深さによって錨索をどれくらい出すかを決定する。魚探がなければ、海図を慎重に眺め測探機で探ったほうが良い。クルーがいるのなら、バウに配置する。バウから海底の様子が探れ、漁師が入れた魚探に移らないしかけのラインなどを目視できるからだ。その状況を操船席のヘルムスマンに伝え回避させることはバウに配置されたクルーの大事な役目。また、泳いでいる人、潜っている人、潜水具の泡などがないかも確認してもらう。

 海で使うルームという言葉はご存じだろうか。アンカーの場合、自船が投錨し、バックさせて錨索を繰り出し、なおかつ風や潮の影響を受けて船が錨を頂点にして触れまわっても安全を守れる水域、それをルームという。例えば、投錨している他船の近いところでアンカーを入れても、そこから錨索を繰り出す目安として水深の3倍の長さを考え、スペースが十分であればルームとみなすが、その近辺にタコつぼや海水浴場のブイに、錨を頂点に船がかかわるようであれば、ルームがあるとみなされない。また、それらが近くにあると、アンカーをあげる際に、万が一そのしかけのロープを拾ってしまうことがあり、アンカーはあげられない船は固定していないという非常に困った立場に追い込まれるからだ。他のロープを切断してしまうのはもっての他、なんとかそのからまりを短時間で処理しなければならないことを考えると怖気ができる。

 このルームの見極めがいわば船長の腕の見せどころで、様々な経験を基に風や潮を想定して適切なルームを探り当てることが重要だ。経験の中にはその場に限った特色も含まれる。たとえは、午後になり海風が上がると、山からの吹き下ろし、川への吹きこみ、潮の影響、そこに泊まっている他の船の向きがみんな同じ方向に素直に向いているか、ばらばらな向きを示しているのか、なんらかの自然の影響なのか、それらを総合的に判断しなくてはならない。

 ルームを見出したら、クルーにどのあたりに投錨し、何メートルの水深で何メートル錨索を出すかを指示。クルーは海底が見えるようであれば底質がどうかを見る。たとえ砂地でも海藻の上にアンカーを落とせば、アンカーに海藻がくるまってしまい爪が立たなくて走錨ということもあるからだ。そして船長の確認によりレッコ。レッコと言っても錨を放り投げてはいけない。錨が水中を走っていくことを考えて、その翼がちゃんと働くようにそっと海中に入れるべきだ。フリーに錨索を出せるのであればアンカーが水中を走っていくのが見えるはずだ。着底した感じを錨索から感じたら、船長に指示を出してゴーアスターンをかけてもらう。船の後進にあわせて錨索を繰り出し、指示された長さで決める。その際に船が惰性で後ろに下がっているくらいが良い。アンカーが海底にバイトすれば、錨索が張って船も止まる。すぐに周りの形式を見て、陸地の建物、電信柱、山、木など対地で自分の見通し位置を観察し、自分の海の上での位置がどういう位置関係かを確認する。さらにパイロットブイを付けていれば、その位置に対する船の向き、風上にパイロットブイがあるかを確認しておく。そしてしばらく観察を続けること。錨索のテンションを確認しながら走錨していないと自信を持った時に初めてエンジンを切る。 だからとって、常に陸地との見通しの確認を怠ってはならない。直床した海底が、たとえば斜めのところで、それが爪をはずしやすい地形にあることもあり、または風の振り回しでそういう状況に変化してしまうこともあるからだ。また海藻を引きずってしまい、爪かかりが実は少しだったなんてこともある。 泳いでいる人がいるときにはなおさら不意にプロペラが回らないようにエンジンストップするが、なにせ錨索一本でいつ何が起こるか分からないので、すぐにエンジン起動できるようにしておく。他船の動向がこちらにかかわりがないか、走錨はしていないか、常にだれか一人は必ずウオッチし続けることをお勧めする。

 楽しい船遊びの小道具として、救命浮環などを使うと良い。普段、しまわれている浮環のロープをまとめなおすこともできるし、泳いでいる人の近くに投げる練習にもなるからだ。 さて、抜錨の準備。まず、点在している遊び道具、スイミングステップなどをしまうことを忘れないように。遊泳者がスターンに居ないことを確認してエンジン始動。クルーはバウに配置、アンカーの位置がどこにあるか分からない場合は、錨索がどっちの方向に出ているのかクルーが指し示す。その報告に船を回頭、バウスラスターを使っても良い。錨索がストレスなくまきとれるように船位を確認しあいながら、巻き取りを開始。その巻き取りスピードに応じて船を進ませる。ウインチだけの力で巻き取ると、かなりの負荷を持たせることになるので、必ずクルーの錨索の方向、まき具合を考えて船をアンカーの真上に行くように操船する。間違っても錨索を乗り越えていき、船尾に絡まないように配慮すること。真上に来たら行き足を止め、アンカーが巻き上げられ、クルーがしっかりと固縛するまでホールドすること。この際、事前にクルーとは手信号などの取り決めをしておいたほうが良い。我々は腕を指し示すことで錨索の方向と角度がわかるようにしている。もう一人クルーがいればアンカーロッカーの中で、巻き上げた錨索が絡まないように整理させることも次使うことを考えれば重要。たまにあることだが、アンカーが海底に引っかかってしまい、にっちもさっちもいかないときがあるが無理は禁物だ。そーっと船の前後進を使って揺さぶってみて、それでも駄目であれば360度船を回して試す。しかたなくロープカットとなった場合は、切った残りロープが浮いてこないように、何か錘になるようなものを取りつけてレッコするしかない。  巻き上げたアンカーはホルダーに固定し、安全策を取りつけ走行中にアンカーがずれてしまわないようにする。万が一、走行中に安全策なしでアンカーが脱落してしまえば、想像したくない重大な事態となりえるからだ。

 このようにアンカーリングひとつとっても、事前にクルーと打ち合わせをすることによりスムーズの決めることができる、船は乗り合わせた全員の運命を共にするため、一人の運用よりできるだけ全員の協力を得られるように普段から心がけたい。

スマートキャプテン 第2回  離着岸の心得

SMART DRIVING 船長の心得とへルムワーク

4:6の法則

操船の基礎はすでにいろいろな場所で紹介されている。

もちろん、海技免状を取る際にも教わるが、それは基礎となる一軸船での、しかも通り一遍なもの。免許を取ったからと言ってとも、飛行機のライセンスのように完璧を保証されたものではなく、経験の第一歩を踏むもの。とても実際に高価な船を無傷で離着岸できる経験を積んだものではない。2軸船、特に30フィートを超える大きさになると、操船技術だけではなく、綱を取ってくれるクルーとの連携も大切になる。ここではクルーの動きまで含めた操船術を検証し、ワンステップ上の操船をマスターしたい。

第二回:離着岸の心得(続き)

マリーナや港に入港する際には、長い間前進しか使っていなかったクラッチが、両舷ともちゃんと後進につながるかどうか確認することをお勧めする。港の中は狭い場合が多く、その中でいきなり後進につながらないということがわかると、そのまま事故につながることが多いからだ。実際に安全重視の本船でも、瀬戸内海のフェリーが岸壁衝突を起こした事故など結構多いからだ。

さらに何処に、どのように着けるかをブリッジにクルーを集めて指示を出す。その際には、着岸場所とその時の風をよく観察し、自船が守れて離岸しやすい場所、向きなどを考える。基本的には船首を風上に向けるのが安全上一般的なのはいうまでもない。桟橋か岸壁かでフェンダーの位置が異なり、もやいに使用するロープの太さ、長さも違ってくる。さらに擦れ止などの細かい備品も違ってくる。風向きなどで入船、出船どちらにするのかで左舷右舷を明確にし、

「桟橋、入船、左舷。」この3っつは最低伝える。

例えば、ジョン氏は奥さんと子供に入港前、

「桟橋、入船、左舷。風が強いからまず僕が桟橋にわたって船首のもやいを仮どめする。そしたら手を挙げて合図をするから右舷を後進に入れて、船が桟橋に当たりそうだと思ったら左舷を前進に入れて船尾を桟橋に近付けてくれ。ティムはフェンダーを桟橋の高さを見て調整しなおし、もやいロープは青い奴を使ってムアリングホールを通してクリ―トに舫い、投げやすいようにコイルしなおしておいてね。パパが桟橋にわたってから君の方に行き、手をあげたら僕にロープを投げるんだよ。あとは桟橋からロープを引っ張るから、ジョージは僕の動きに合わせて船を操船してね。」

とこれくらいの指示を事前に出している。

いずれにせよ、ちょっとでも風があれば船をエンジンのクラッチワークだけでホールドさせておくことは難しく、おおにして桟橋との位置関係が理想的になる時は一発勝負となることが多いので、事前にクルーとの打ち合わせが効力を発揮するのだ。あとは、どんな状態の時にどうなるかのシミュレーションの問題。ここではいくつか代表的なシミュレーション例を述べる。

着岸する際の留意点として、まずフェンダーなどのつけ方、ノット(結び)をクルー全員同じやり方に統一する。人それぞれ違うやり方があるが、それぞれのフェンダーがそれぞれのやり方で留めてあると、機敏な対応が必要な時にとまどい、ワンテンポ遅れてしまうからだ。

もやいに関しては、着岸前係船具につけたロープが投げやすいようにコイルをし直しておく。いざ放ったときに団子になって桟橋に届かず海に落とさないようにだ。仮係船の後にはスプリングを取らないと、風や潮流で船をホールドできない場合が多いので、予備ロープを出しておくこと。これはもし選択したロープでは足りない時にもすぐに役立つことができるだろう。

その上で船長が考えることは乗員の安全。陸側に誰かが飛び移らなければならないが、無理に飛び、万が一陸と船の間に落ちてしまうと取り返しのつかない事故につながることが多い。桟橋と船に押しつぶされなくても、陸側は桟橋でも貝が付着していることが多く、その貝でものすごい怪我をすることが多い。これも船長の責任だ。そのために、クルーが安全に飛べる最低でも一点を確保すべき船を操船することが必要となる。極端に言い切ってしまうと、安全にクルーが陸側に移ってくれさえすれば、実はこれで着岸の重要な部分はほとんど済んだと言っても過言ではないくらい、重要なことだ。

陸側に飛び移るクルー、船を着桟するというよりも、そのクルーがロープを片手に安全に飛びやすいように、エンジンの推力を使ってアシストするつもりで操船をする。ただ、強風時などは、人の力には頼れなくなるので、その推力を効率的に使う段取りが必要となる。

桟橋に渡ったクルーがまず行わなければならないのは、船首であれ、船尾であれ、必ず風上側からもやうこと。これはよく見受けられることだが、バウ着けに慣れているクルーは、風向き関係なくまずバウを舫おうとする。もし船首が風下であった場合、船首だけ決められてしまうと、風に押されて船尾が開こうとするのを推力を使って船尾を寄せることとなり、操船としては無理ができる。あくまで風上から舫いを取ってもらうことを船長は事前に指示しなくてはならない。そうすれば船尾、船首問わず、風の力に逆らうことなく自然に着桟することとなり安全度は増す。

風が強い場合などはスピードが要求される場合だが、それだけ事前の打ち合わせ事項が多くなるはずだ。桟橋に乗り売ったクルーにどうしてほしいのか。例えば船首から風を受けている場合、長さはアバウトで構わないからとにかく仮どめするのか、それとも後ろに泊っている船にぶつからないように、できるだけ長さを絞って留めてもらう必要があるのか、船尾の留めはどのタイミングか、またそれぞれの確認の合図はどうするのか、シミュレーションに基づいた打ち合わせを行う。でないと、船長はわけのわからないクルーを怒鳴りつけなければならない状態に陥るだろう。

しつこく述べるが、船は自船の行き足、風、潮流の影響により一定の場所に保持しておくことが難しい。例え、IPSやスラスターを使ってもその場にとどまるのは繊細な操船が要求される。強風下ではなおさらそのタイミングがシビアになる。クルーが陸側の風上に舫いを取ってくれれば、着岸のワンステップは終了となる。ここが船長とクルーの4:6の所以だ。

さて、係留した際は仮どめしてある舫いを、船首、船尾とも余裕のある太さのロープでしっかりととる。ロープ自体が船を守る命だ。そおロープを普段から大切にケアすることも重要。ヤーンがほつれていたり、経年により硬くなってしまったロープは切れやすく、そのロープとしての機能は使う前から失っている。

そして舫う際、解くときにはすぐに話せるようにできるだけシンプルな舫いを行うこと。他船と簿ラードなどを共有する場合には、他の係船ロープとからまないように意識してケアする。これはやるのも面倒なのでまれだが、船側、陸側ともにアイで係船している、もしくは長さがきつきつで使っているのを見るが、人がいる方、調整しやすい方を後からでも長さ調整ができるように配慮するべきだ。

また、場所にもよるが船のクリ―トの真下の係船具を使い、しかもきちきちに舫ってあるのもたまに見るが、あれでは揺れる船上のクリ―とが傷む。目には見えにくいが船とクリ―トの留め金具は、長手方向に強くできており、真横の力には比較的弱い。その時は大丈夫に見えて随時真横の力で揺れを繰り返しているうちに、船内側のクリ―ト台座が損傷を受け、止めボルトの緩みなどにつながってしまうだろう。

岸壁と桟橋ではその長さ、間の取り方が全く違う。船と一緒に浮き沈みする桟橋、干満差の影響を受ける岸壁、ロープの余裕の取り方が大きく異なってくる。スプリングラインは、陸側との損傷を避けて平行に止めることのほか、風や潮流の影響で船が走らないようにする役目がある。またスプリングとはばねのことだが、これは例え強く張ったロープでも長ければそれなりにロープ自体が伸縮するとうことでもあるので、それらを考えて適切な長さで取る必要があるのだ。

数分以上、長時間岸壁に係留する際には必ず擦れ止を施す。ロープが岸壁などにこすれて切れるときは、本当にあっという間の出来事となるので、ウエスでもなんでも擦れ止を施すことを面倒がってはいけない。

これらはクルーが行うことではあるが、その責任は船長にあり、船長は適切に指示し確認をしなければその責任をかっとうできないのだ。

スマートキャプテン  第一回  キャプテンの心得

SMART DRIVING 船長の心得とへルムワーク

4:6の法則

 

操船の基礎はすでにいろいろな場所で紹介されている。

もちろん、海技免状を取る際にも教わるが、それは基礎となる一軸船での、しかも通り一遍なもの。免許を取ったからと言ってとも、飛行機のライセンスのように完璧を保証されたものではなく、経験の第一歩を踏むもの。とても実際に高価な船を無傷で離着岸できる経験を積んだものではない。2軸船、特に30フィートを超える大きさになると、操船技術だけではなく、綱を取ってくれるクルーとの連携も大切になる。ここではクルーの動きまで含めた操船術を検証し、ワンステップ上の操船をマスターしたい。

 

第一回:キャプテンの心得

第一回目は、ギャラリーが見守る中、スマートにピタッと決めるためのキャプテンの心得をご紹介しよう。

 

アメリカ東海岸、ノースカロライナにあるパイレーツコープというマリーナで、世界3大名スポーツフィッシャーマンと言われたDAVIS45Express Fishermanを待っていた。天気はいいのに日本で言うとちょうど逗子マリーナのような狭い港の中でもさざ波が立ち、指定されたポンツーンに着岸するには難しいだろうなと思える強いオフショア(海に向かって吹く風)の風が吹いていた。

約束通りの時間にお目当ての45が入港してきた。案内してくれたDAVIS社の人に聞くと、そこに乗っているのはDAVIS社のキャプテンではなく、オーナーである銀行家ファミリーだという。おいおい、素人同然の人に、しかも、奥さんと幼い息子との3人と聞いて、こんな難しいシチュエーション、こりゃー大変だと思い、綱を取るために桟橋に立つ。風は強く、狭い航路、見ている私がその難しさに身震いをするほどだった。

近づいてくる船、それまでヘルムステーションに居た船長であるはずのジョン氏がサイドウオークを渡ってロープを携えて船首に立つ。ヘルムステーションには長いブロンドの髪をなびかせ、サングラスをして船の操船をしているのは奥さんのジョージ。船が回頭をはじめスターンが見えてくると、きちんとコイルされたロープを持つ幼い少年のティム。まいったなー、一発勝負だなと思って桟橋から綱を取るのに構えて見ていると、完璧に一発で、しかも誰一人声を上げることなく狭いポンツーンに決して小さいとは言えない45を着桟させた。幼いティムは、作法通りにロープを桟橋にほおってよこす。あまりのスマートな着岸のパフォーマンスに、思わず拍手をしてしまったほどだ。

挨拶もそこそこに奥さんのジョージにすごい着岸ですねと思わず言うと、

「私がうまいんではなくてよ、着岸する前に主人との打ち合わせ通りにしただけなのよ。」との返事。そこでご主人であるジョンに聞くと、

「何といっても、操船の技量が40%で、クルーワークが60%だからね。女房の操船で十分だよ。ポイントだけ着岸前に打ち合わせしておいたから。」

 

キャプテンの心得

「船は一人で動かすものではない。」

 

一人ならば助けてくれる人がいないことを思い知る。そのため、一人で走らせるには何より落水が一番怖い。航行中は一人で2つしかない目で見ているより、2人で4っつの目、3人で6っつの目で見ている方が高速走行時に海に漂う障害物を発見しやすい。ただし、同船した方々に助けてもらうためには、どうしてほしいかを教えることが必要となる。まして、クルーがいるのならその教育が船長の心得。

もちろん、クルー全員が船長代理をできるくらいに経験や技量を積むと、お互いに刻こくと変化する船の状況下で、次なる打つ手がおのずとわかるので、それこそ阿吽の呼吸で作業が進み、安全さが増す。が、それまでにお互いのスキルを積むのには共有する時間が必要になってしまう。そこで行かせるのは船長の経験やスキル、それを教育して判断や作業を共有のものにすることが安全への近道なのだ。

 

スマートな操船は

「自分の船を知ることから始まる。」

船長だからと言って、船の掃除を他人任せにはしない。むしろ船長だからこそ、毎回とは言わないが率先して自分の手で行うことが望ましい。

自船のストレスはどこにあるのか。船体のゲルコートに浮き出るひびや傷、船全体の強度から来る良い部分や、デリケートな部分などを知るには、自分の手で掃除をしていると、どこに現れているかがわかり、実際に波頭を超えて操船をする際など、これらのウイークポイントをかばうような操船も可能になる。そして、船内においても、掃除を通して様々な備品がどこにどれくらいあるのかを掌握できる。掃除を通して船を知るということはとても大事なことなのだ。

それぞれの備品、例えは救命浮環やライフジャケット、信号紅煙、象形物はもちろんのこと、各種ロープ、ナイフ類、清水のペットボトル、救急用具などなど、どこになにがどれくらいあるのかが頭に入っていれば、あわやというパニック状態に陥りやすい状況でもクルーに的確な指示が出せ、船長としての責任を全うする大きな手助けになる。

 

さて、まず新しい船と接するとき、まず自船がどのような特徴をもち、くせをもっているのかを知らなくてはならない。Vハルなどの船型、トンネルハルやデッドライズの大きさ、トンネルドライブハルなど駆動ペラのかかわり、IPSやシャフト、エンジンの種類や配置、上部構造物や船の重心点の違いなどによって走らせ方そのものが変わってくるからだ。

船の駆動には、1軸、2軸、それぞれに船外機、船内外機、船内機、船内機の駆動方法にもVドライブ、IPS、従来のシャフト船様々で、それぞれがおのずと操船方法がかわってくる。まずはまる一日をかけて操船訓練だけをすると良い。練習を通して、その船の挙動のくせ、見切り位置などを観察する。練習方法は様々あるが、まずはあまり風のない日に、港から出た穏やかな海面をまっすぐに走らせることから始まる。まっすぐに走らせるといっても、これがなかなかのもので、例えば方向を司る舵と駆動するプロペラが一体になっている船外機や船内外機ではそのバランスによってはかなりセンシティブな操作が強要される場合がある。これは、駆動支点が船尾端にあるために推力の効率が良すぎて舵角がちょっとずれただけでも起きてしまう挙動と言える。つまり例え2軸船でも、船外機、船内外機の船の場合、そのクラッチ操作だけで船を離着岸することは、そのニュートラルポジションがつかみづらいために、ステアリングを1軸船のように併用した方がより確かとなるのだ。

このようにその時のエンジン音、ステアリングの反応、スロットルに対する挙動を少しずつ知ることから始まる。そしていよいよスロットルを開けていく。ターボを積んだディーゼルエンジンなどでは、そのターボが効きだす頃が、船が滑空を始める直前となる場合が多く、当然水圧などの負荷が一番高まりつらい状態となる。これらもエンジン音を良く聞いていると辛そうだなとわかるのだが、案外それに気がつかずに、いわいるこのようなハンプした状況で長時間走らせ、エンジンに過大な負担をかけて走らせている方が多い。

さらに2軸船の場合は、お互いのプロペラの負荷が同様にかかっているシンクロした状況と、相互が全く違う回転数で必要のない負荷を片方にかけている場合も、エンジンを壊してしまう要因となる。この時のエンジン音はお互いが共鳴し合ってワンワンと泣いているので効いているとすぐにわかるはずだ。シンクロしている状況でも、潮流や波によって多少の負荷がお互いに変化しているものだが、音を聞いているとなめらかな共鳴和音となるはずだ。

そして、まっすぐ走らせるうえで、ステアリングで常に調整していかなくては航跡が真っ直ぐにならないのか、それともステアリングにさわらなくてもきれいな航跡を描けるかなどの船の性格もわかるだろう。前者は船長や船型、プロペラとのマッチングや舵の大きさなどが造るバランスの幅が小さいために起きる現象で、それなりに考慮に入れて走らせる必要がある。ノーステアリングでまっすぐ走らせることができる船は、それらのバランスが良い船と言えるだろう。これは海況の向かい風、横風、追い風によっても如実に反応が違うのでそれぞれを試してくせを掌握することが望ましい。

そしてまずはクルージングスピードでの走行。通常、エンジンメーカーは75%から85%程度のエンジン回転数を推奨している。というのは常に100%のマックススピードではエンジンに負荷がかかりすぎると言われ、実は設計上そこまで想定された仕様にはなっていない場合が多いからだ。つまりは2350回転がマックスだとすると、1760回転から1997回転の間が巡航回転数となる。これがエンジンメーカーが自信を持っているバンド体であり、また船を造る際の燃費消費量と継続航行距離もこれが基準となって計算されている場合が多い。

さて、巡航時にステアリングを使って回頭させてみる。そのレスポンス、ハンドルを切ってもすぐに反応してくれるのかタイムラグがあるのか、回転半径などを観察してみると良い。目の前に障害物があったときに、どの程度切らないと避けられないのかが良く分かると思う、また、波の中での複雑なステアリングを余儀なくされるときにでも、これらを理解しているといち早い波に対する反応ができるからだ。

一通りやってみた港に帰る時、もし平穏な海であればマックス走行をしてみよう。それによりマックス走行時の回転数が定格なのか、足りずにまわりきっていないか、それとも回りすぎてしまうか、これらもくせがある。定格の場合は、計算通りの負荷運転ができていることを示し、足りない場合は、駆動に対する船の負荷、例えば船底に会などが付着しているとか、積み荷などが多すぎるとか、また多すぎる場合はプロペラとのマッチングが悪いとか、それらを想定できる。マックス運転は、通常その日に動かした時間の5%以内にとどめるべきだといわれている。これはエンジンの負荷に無理をさせずに、ピストン内の爆発を最大限にしてシリンダー癖をつけないという効力もある。

そして港近くでよいから何かブイがないか探してみよう。広い海の上では自分の位置や角度がわからなくなるので、沖に浮いている定点ブイなどを使ってその位置関係を図りながら、アスターン(後進)などを試し、さらにそのブイに船首だけつけてみるなど角度を変えて様々に練習してみるとかなり性格がつかめるはずだ。それらのことは、全て始まる前にクルーに聞かせてこれからこういうことをやるといってそれぞれにその船の癖を理解させることも必要だ。特に、ブイに対しての練習は、その船の行き足、オーバーステアリングしてしまう性格などを見るのには理解がしやすいものだから。またマックス走行時には、海面に漂う障害物を複数の目で確認しあうことも必要だし、一人はエンジンの様子、油温や水温の上昇を専門的に見届けていると、より安心感が増すだろう。

このようにして、まずはとにかく自分が描いた通りに船を操船する自信をつける。そして港に帰った時には、いきなり難しい着桟を目指すのではなく、まずはできるだけ簡単な着桟をしてみよう。例えばどのような船でも着桟しやすいように造られたビジターバースなどを利用する。その際にはクルーとの事前打ち合わせを忘れないように。まず自分はどういうふうに、どこの船を着桟しようと考えているのか。その際にどういう注意と準備が必要か。例えば風の向きによっての船の挙動、桟橋と船にかかわるフェンダーの位置、取りつけ高さ、前後のロープの必要な長さ。何処が一番船と桟橋が近くなりどういうところで飛び移るのかそのタイミング、桟橋に人が渡った後、誰が何をするのかまで打ち合わせをするとよい。わかっているだろう、は禁物だ。これは余程経験をともにしていないとお互いが当たり前の行動ではなくなってしまう。